婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「そっちの奥の扉が俺の部屋。とりあえず、陽菜の部屋に案内する」
玄関を入り、右の廊下を進んだ先に怜士の部屋があるらしく、正面左のドアを開けると、とんでもなく広いリビングダイニングが縦長に広がっている。
三十畳以上はありそうなその空間は、ダイニングテーブルこそ黒い木目調のものが置かれているが、それ以外はベージュや淡いグレーを基調とした優しく温かみのある雰囲気のインテリアで統一されていた。
コの字型に配置されたソファは、革張りではなくベージュの布張りで、背もたれのないソファモジュールやシェルフを挟み、置いてある淡黄のクッションが差し色になっていてとてもオシャレ。
怜士の実家のシンプルでクールな印象の部屋を知っているだけに、私は意外に思った。
もっと黒やグレーなどモノトーンカラーで纏めたスタイリッシュな部屋に住んでいるイメージなのに。
もしかしたら、週刊誌に載っていた彼女の趣味だろうか。そう考えると、胸が軋むような音を立てた気がした。
「ここが陽菜の部屋」
ソファの背中側にあるドアを開けると十二畳ほどの洋室で、壁紙やカーテンの色を含めてオフホワイトとベージュで統一され、床のラグだけ淡いピンク色で差し色になっている。