婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
バタンと閉まる扉の音を聞きながら、私は途方に暮れそうになる思考回路に鞭打って、必死に今後について考えた。
霧崎商事は麻生グループから資金援助を受け、代わりに政財界への繋ぎを担う。
その担保として私は結婚を承諾せざるをえないと理解はした。
仲良く夫婦ごっこをする気はないけれど、実家に帰りたくない以上、ひとりで生活する場所を確保しなくてはならない。
結婚までの半年をホテル生活するというのは保育士の給料では現実的ではないし、いくら千花が言ってくれたとはいえ、颯真さんに頼るのも申し訳ない。
部屋を見回りながら、諦めてここに住むべきだろうと嘆息する。
幸いお風呂とトイレはふたつずつあってプライベート空間は保たれているし、生活スタイルも違うなら極力顔を見ないように出来そうだ。
覚悟を決めると、早速必要なものを買いに行こうとカードキーを握りしめて部屋を出た。