婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

大企業の御曹司としてのプレッシャーもあるだろうけど、それを見せずにずっと努力しているのを、私はずっと隣で見ていた。

よく怜士は友達からも『怜士くんのお父さんって、大きい会社の社長なんでしょ? 凄いね!』と言われていたけど、小学生の私にはなにが凄いのか、まったくわからなかった。

『凄いのは怜士のお父さんとおじいちゃんで、怜士は別に凄くないよ。だってただの小学生だもん』

生意気にそんなことを言っていたのを覚えている。

だけど、自らの夢を『自分から勉強したくなるような“楽しい教材”を作る会社にしたい』と語った怜士を、純粋に凄いと思った。

真っすぐに将来を見据える彼がとてもかっこよく見えて、その日以来、怜士といると胸がドキドキしている自分に気が付いた。

きっと、これが“好き”って気持ちだ……。

子供ながらに恋に目覚め、ずっとその想いを大切にしていた。

日増しに大きくなっていく想いと共に、怜士の夢を応援するだけでなく、将来大企業のトップに立つであろう彼の役に立ちたいと思うようになった。

中学生になると、“楽しい教材”を作るのもいいけれど、勉強を好きになるにはもっと小さな頃から学ぶ楽しさを体験するべきではないかと、子供ながらに幼児教育の重要性を感じ、何度もふたりで話し合ったりもした。

私も将来は保育士になりたいという夢があり、幼児教育の現場で得た知識は、いつか怜士の夢を叶えるのに役立つのではと考えた。

素直になれなくて直接本人に言ったことはなかったけど、怜士に恋をしたことによって、私にとって保育士という職業は“将来の夢”ではなく、現実として目指すべきものという“目標”に変わったのだった。

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