婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

怜士のマンションに来てはじめての朝。コンコンと部屋をノックする音で目が覚めた。

「陽菜、少しいいか」
「なに?」

ドア越しに返事をしながら身体を起こし、時計を見ると午前八時を少し回ったところだった。

「顔見て話したい。開けるぞ」

普通だったら寝起き姿を見られてしまうと慌てるところだけど、今日の私は動じない。

ドアノブが回され扉が押されるも、ガチャンと音が立つだけで一向に開かなかった。

その理由は、扉の縁と壁の境目に渡り、ねこの絵の書かれた可愛らしいドアロックが貼り付けてあるからだ。

百円ショップ優秀だな、なんて私が感心していると。

「……おい、なんだこれ」

扉の向こうで怜士の不機嫌な声がした。

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