婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
同じ高校、ひと学年上、保健委員……と考えながら、改めて目の前に立つ人の顔を真っすぐに見つめる。
その美しい顔立ちから、すぐに高校時代に『学校一の美女』と呼ばれていた先輩の姿が頭に浮かんだ。
「あっ! 彩佳先輩?」
「ふふ、嬉しい。覚えててくれたのね」
「そ、それはもちろん……」
あの高校に通っていて“神宮寺 彩佳”を覚えていない人はいないだろう。
そのくらい容姿端麗で有名だった。
それだけでなく彼女は有名な飲料メーカーの社長令嬢で、祖父は元外務大臣を務めたほどの著名人。
誰もが憧れるような完璧な女性だったけど、私が彩佳先輩を知っていたのはそれが理由ではない。
彼女は、怜士の元カノだった。
「霧崎さん、ここの先生なの?」
「はい、彩佳先輩は……」
「再来月から息子がお世話になります」
そう言って少し頭を下げる先輩は、あれから十年経っていても相変わらず綺麗なままだ。