婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

あの学校は良家の子女が多く通っていて、高校の頃にはすでに婚約者が決まっているという話も珍しくはなかったし、きっと怜士が私と婚約しているという噂を先輩も知っていたはずだ。

委員会で私とは顔見知りだったし、意地悪をしようと思えば何だって出来る環境だった。

それなのに、他の女の子と違って私に恨み言をぶつけてくることはなかった。

彼女ほどの恵まれた容姿と家柄なのだから、きっと私なんか眼中になかったんだろう。

怜士の隣を微笑みながら歩く彩佳先輩は美しさの中にある可愛らしさが引き立って、映画のワンシーンを見ているように絵になっていた。

私の記憶が正しければ、怜士の歴代の彼女の中で、彩佳先輩と一緒にいた期間が一番長いんじゃないかな。

それだって、確か三ヶ月くらいだったと思うけれど。

基本的にどの女の子に対してもクールに振る舞っていた怜士が、一番素に近い表情で接していたのが彼女だったと思う。

当時そんなふたりを見て、私は胸が焦げ付くような感情を覚えたんだ……。

「羨ましいって?」
「だって、政略結婚を断って、好きな人と結婚して子供を授かって……」

先輩の旦那さんだって、きっと大企業のお嬢様である彼女を攫うだなんて、きっととても勇気がいることだったと思う。

それでも実行に移したのは、先輩を他の男性に取られたくないという強い想いがあったからに違いない。

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