婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
その力強さに怯みそうになったけど、肘を大きく上げて彼の手を振り払った。
「やめて。私だって言ったはずだよ。結婚はするけど、それまでに本当に好きな人と恋愛をするって」
その相手が、今日会う予定の大内さんになるのかは私にもわからない。
ううん、心のどこかで、きっと違うだろうなって思っている。
本心からこの政略結婚は嫌だし、ちゃんと恋愛をしたいって思っているのに、怜士を見てると胸の奥がざわざわとして落ち着かない。
これ以上話していたくなくて、視線を合わせずに横をすり抜ける。
「陽菜」
思い止まらせるように名前を呼ぶ怜士の声を無視して、私は閉まる扉を背にエレベーターホールを目指した。