婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
話の内容がなにかわからないけど、聞くだけ聞いてみようか。
もしも不快な話なら、遮って部屋に下がればいい。
「わかった」
了承して頷くと、再びあからさまにホッとされ、なんだかずっと怜士を避け続けていた私が悪いことをしたような気にさせられる。
気を取り直して彼のあとについてリビングに入り、大きなソファの真ん中に座ったのを見てから、一番遠くのスツールに腰を下ろした。
怜士は私を見て顔をしかめたが、話を切り出すために姿勢を正し、真っすぐにこちらを見つめてきた。
「陽菜」
子供の頃からずっとそう呼ばれてきたというのに、どこか切羽詰まったような声音で名前を紡がれると、むずむずとした言いようのない感覚が身体を走る。
なぜだかとにかく落ち着かなくて、早く話を終えて部屋にこもってしまいたい衝動に駆られた。
「陽菜は俺と結婚することを承諾したよな」
「……一応」
「でもこの結婚を家の“犠牲”になるって思ってる」
「うん」
「だから、その前に恋愛をしたいなんて言い出した」
「……なにが言いたいの?」