婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
三週間前のハイライトを確認するように改めて言葉にされ、一体なにがしたいのかわからない。
訝しみながら話を先に進めるように顔を上げて視線を返すと、怜士は意を決したように口を開いた。
「“犠牲”なんて思わないくらい大事にする。恋愛をしたいなら、俺とすればいい」
「……は?」
たっぷり二十秒はフリーズしてしまったと思う。
声にならない疑問が、弱々しい吐息とともに漏れ出るのみ。
怜士がなにを言い出したのか、まったく意味がわからなかった。
「ちょっと意味が……」
聞き間違いじゃないなら、恋愛をしたいなら自分としろって言い出した?
まさか。そんなことあり得るわけがない。
あまりに私が怜士を避けるから、たちの悪い冗談で嫌がらせでもしているつもりだろうか。
首をひねって苦笑していると、私の心の声が届いたのか「言っておくけど、冗談じゃないから」と釘を刺された。
「俺は、子供の頃からずっと陽菜が好きだった」
その言葉を聞いた瞬間、時が止まった気がした。