婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「嘘じゃない、俺は本気で」
「信じられるわけないでしょう?!」
本気だと言い募ろうとする怜士の言葉を遮って叫び声を上げる。
急に態度を変えたあの日以来、私がどれだけ困惑したと思ってるの?
どれだけ傷ついて、涙して、あなたを嫌いになることで自分の心を守ってきたと思ってるの!
「私、怜士の歴代の彼女の名前言えるよ? ひとりずつ言っていこうか?」
先日会った彩佳先輩を含めて、私が知っている高校時代の彼女だけでも片手じゃ足りないはずだ。
当時、怜士の彼女の噂を聞くたびに、傷付かないよう私の心は徐々に固く閉じていき、高校を卒業する頃にはどんな話を聞いても動じなくなっていた。
そんな彼女たちの名前や顔、さらには吐き捨てられた暴言まで思い出し、彼への嫌味のつもりが、自分の胸まで抉られるように痛む。
それを悟られないよう怜士を睨んでいると、「それはお前が……っ」と反論しかけて口を噤んだ。
「私が?」
続きを促せば、怜士は苦虫を噛み潰したような顔で話し出した。
「高校に入学した頃、陽菜との結婚の話を親父から聞いた。霧崎商事の経営が上手くいってなくて資金援助してることも、その見返りに霧崎家が持つ政財界へのパイプを使ってることもその時に聞いた」
ここまでは、以前ホテルでも聞いた話だったので特に驚きはしなかった。