婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「結婚の話は霧崎家から持ってきたらしくて、陽菜も了承済みだと言われてガキだった俺は舞い上がった。親は政略結婚だと思っていようが、俺にとってはずっと好きだった陽菜と結婚出来るんなら何だってよかったんだ」
その感情には覚えがあり、ハッと息を呑む。中学生だった私もまったく同じことを考えた。
これは政略結婚なんかじゃない、れっきとした恋愛結婚だって。
でも、じゃあどうして……。
私の疑問は、そのあとの怜士の話で吹き飛んだ。
「でも、陽菜が結婚することに対して出した条件を聞いて、頭が真っ白になった」
「条件?」
「親父さんに言ったんだろ? 『結婚するまでは自由に遊びたい』って。それって、俺以外の男と遊びたいって意味だったんじゃないのか」
「えぇっ?」
怜士が眉間に皺を寄せながら言い放った言葉に、私は驚きと反論の混じった声を上げた。
確かに大学卒業後は、麻生グループに就職したり花嫁修業したりするのではなく、保育士になりたいというのを、結婚を了承する代わりに許してもらった事実はある。
だけど決して自由に遊びたいと言ったわけじゃない。
むしろ、怜士との将来を考えて、保育士になりたいと願い出たのだ。