婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「そうだな、会場はこのホテルの宴会場をおさえようか。時期は陽菜ちゃんの誕生日あたりですかな」
怜士のお父さんが具体案を出すと、父が嬉しそうに頷く。
「ええ。陽菜は三月に二十五になるので、あと半年と少しですか。そろそろ準備を始めなくては」
「あら、じゃあ陽菜ちゃんのお誕生日祝いも兼ねて盛大にしましょうよ。お誕生日に婚約発表なんて素敵じゃない!」
怜士のお母さんが夢見る少女のように胸の前で手を組んで声高に提案した。
どんどん話が具体的になる前に歯止めをかけなくては。
気が進まなかったけどこの席についたのは、この店の料理を堪能するためだけではないんだから。
飲み込んだ枇杷ゼリーの爽やかな後味が私を後押ししてくれる。
この日のためにずっと努力してきた。
高校生の頃から、ずっと解放されることを望んできた。
言いたいことの半分も言えず、やりたいことも後回しにして、屈辱に耐えながらずっとずっとこの時を待っていた。