婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「悪かった。あの頃のことは弁解しない。勝手に誤解して、ヤケになって陽菜を傷つけたのは事実だ。だけど、これだけは言わせてほしい。どんな女といたって、俺が好きになったのは陽菜しかいない」
縋るような視線を向けられ、信じてほしいと懇願される。
真っすぐで曇りのない瞳は、私が惹かれていた頃の怜士そのままで、目を逸らせない。
「学生時代はともかく、入社してからは陽菜と結婚するために一人前になろうって、仕事ばっかりしてた」
「うそ。だって、最近週刊誌に撮られてたのは?」
ファッション雑誌で表紙を飾るような綺麗なモデルとの熱愛報道が写真付きで出ていた。
記事には食事をしたあと、そのままホテルへ消えていったと書かれていたはずだ。
私がすかさずそう反論すると、怜士は首を横に振った。
「ふたりきりで会ってたわけじゃないし、同じテーブルで食事しただけで何もない。そもそも初対面だし、記事になるまで名前も知らなかった」
そんなことあり得るだろうかと思うものの、怜士が嘘をついている感じはしない。
「じゃあ、この部屋のインテリアは?」
「インテリア?」
「だって、怜士の実家の部屋ってこんな感じじゃなかったでしょ。だから、ナチュラル系のインテリアは彼女の趣味なのかと」