婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
リビングだけじゃない。
私に与えられた客間は、明らかに女性に向けた部屋の作りだった。
色合いはもちろん、ドレッサーやアロマディフューザーまであった。
それを伝えると、怜士は焦ったように首を横に振った。
「待て、違う。あれは全部陽菜のために俺が用意したんだ」
今日は珍しい姿をよく見る日だ。何事にも動じない人だっただけに、今日の怜士はすごく新鮮に感じる。
「家に他人をあげたことなんて一度もないし、ここは陽菜と暮らすために二ヶ月前に買った」
「えっ?!」
私と暮らすため……?
じゃあインテリアが私好みだったのは、怜士が私のために選んでくれたから?
「他の女と住んでた部屋に陽菜を連れてくるわけないだろ。そもそも、他に女なんていない」
そういえば、はじめてこの部屋に来た時、怜士は言っていた。
『“俺の家”じゃない』
『え?』
『“俺たちの家”だ』
あれは言葉通り、私との生活のために用意してくれた家という意味だったんだ。