婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「そ……っか。私、てっきり政略結婚だから、彼女との関係は続けるって意思表示でこのインテリアのままなのかと」
正直に言うと、怜士は絶句して眉を顰めた。
「陽菜の中の俺って、どこまで最低な奴なんだ……」
頭を抱えて呻いていた怜士だけど、すぐに切り替えたのか、顔を上げると真っすぐに私を見つめてきた。
「嫌な思いをさせて悪かった。入社後は本当に仕事一筋だし、女とふたりで出掛けたこともない。今さら虫が良すぎるかもしれないけど、信じてほしい」
帰ってきてから息もつけない急展開に、鼓動がうるさいほどドキドキと音を立てている。
こんなふうになるなんて、想像もしていなかった。
ずっと結婚を回避する方法を考えていたし、資金援助の件でそれを諦めたとはいえ、怜士と夫婦らしく過ごす気もなかった。
まさか、怜士がずっと私のことを想っていたなんて……。
でも、さっき彼が自分で言っていたように、学生時代の怜士の行いで私が傷ついたのは確かだ。
そもそも私のことを好きだったのに、他の女の子と付き合っていたってこと……?
ぐるぐると思考がめまぐるしく脳内を駆け巡り、何から考えたらいいのかすらわからない。
そんな私のそばに寄り、怜士はもう一度、ゆっくりと幼い子供に理解させるかのように言葉を紡いだ。
「好きだ、陽菜。ずっと、陽菜だけが好きだ」
その瞳の中に、確かに愛情が迸っているのが見えた。