婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
学校生活を送りながら芽生えた俺の幼い夢を語れば、キラキラした笑顔で応援すると言い、さらにはその夢を実現させるにはどうするべきかと、保育士を目指す彼女は具体的に幼児教育の話まで一緒に考えてくれる。
気が強いけど優しくて、芯があって、笑顔が誰よりも可愛い。好きにならないほうが無理だった。
しかし、想いを打ち明けることはなかった。
自信過剰だった俺は、陽菜も自分と同じように俺を想ってくれていると信じて疑わなかったのだ。
その根拠のない自信は、父から聞いた話で粉々に崩れ落ちることになる。
『陽菜ちゃんは結婚は承諾しているそうだが、それまでは自由に遊びたいと条件を出したらしくてな』
『遊びたい?』
『年頃の女の子だ、政略結婚に夢をもてないのはわからんでもないが……』
父は続きの言葉を飲み込み無言で首を横に振ると、政財界へのパイプは別で探せばいいと、暗に断っても問題ないと言ってきた。
そこでようやく、陽菜の出した条件を理解した。
時が来れば俺と政略結婚はするが、それまでは他の男と遊ぶのに目をつぶれと言ってきたということを。
目の前が怒りと嫉妬で真っ赤に染まり、なにも考えられなくなった。
俺はその日以降、陽菜に対して冷たい態度を取り続け、とことん嫌われてしまったというわけだ。
その条件の意図が、俺が理解した意味合いとは違うのだと気付きもしないで。