男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副団長が過保護です~
 ノエルが複雑そうに溜息をこぼし、『この策士な若馬め』と呟いた。馬はにこやかに『だって、セドリック様が可哀そうでしょう?』と賢そうな顔を誇らしげに持ち上げた。

「あ~……久しぶりだな、副団長殿」
「名前で呼んで下さいよ、なんですか『副団長殿』って。ええ、そうですね、久しぶりですね。あなたとは一ヶ月も会えていませんから」

 セドリックは言葉早く言ったが、途端に諦めたように溜息を吐いた。

「ラビィは相変わらずですね。害獣の被害どころか、ここ数年は大型の獣が村に迷い込んだという目撃報告もないそうですが、あなたが何かしたんですか?」
「『ラビィ』って言うなよ、『ラビ』って呼べ。オレは何もしてないよ」
「そうなんですか? でも昔、人に懐かない狼を手懐けていたでしょう?」

 指摘されて、ラビは言葉に詰まった。

 確かに七年ほど前に、自宅近くまで迷い込んで来た狼を保護し、言い聞かせて山に帰した事はある。人間嫌いな狼を扱える獣師はほとんどいないが、ラビは言葉が交わせた。だから、どうにか短時間で説得出来た訳であるが……。

 あの時は大吹雪で、周りに人の姿はなかったはずだ。ラビは、セドリックが、一体いつからその状況を見ていたのか気になった。
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