男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副団長が過保護です~
案内された警備棟の屋上は、騎士達からは見張り台と呼ばれており、武器が常備された二人用の監視席が設けられていた。そこからは、町の入り口の反対方向である東の大地に聳え立つ氷山が、どしりと腰を構えている様子が一望出来た。
遠くにある雪の大地に佇む氷山は、鋭利な頂を持ち、日差しを受けて深い氷の層を滑らかに光らせている。
その時刻の監視にあたっていたのは、ホノワ村からずっと同行していたサーバルとヴァンだった。見張るだけの仕事には暇を持て余しているようで、山から吹き抜ける冷気を伴った夏風に煽られながら、ヴァンが気だるそうに煙草を吹かしていた。
二人の部隊員は、ユリシスの姿に気付くと敬礼を取った。ユリシスは「こちらの事は気にしないで下さい」と彼らに告げると、東側の方角へラビの視線を促しながら、防壁沿いの塀にある生々しい爪跡を指した。
「氷狼は壁に爪を立て、ここまで登って来ました。今のところは踏み込まれるギリギリのところで食い止められてはいますが、大きな害獣ですから、三頭以上で一気に登って来られたら、数人では立ち打ち出来ないでしょうね」
「確か、一昨日にも出たんだって?」
「情報が早いですね」
そうですよ、とユリシスは、半ば納得のいかない顔で答えた。
その戦闘で怪我を負った男達については、町の病院でまだ治療を受けているのだという。傷口は凍傷になっていたそうだが、大事には至らず、切断といった最悪の事態は避けられたそうだ。
遠くにある雪の大地に佇む氷山は、鋭利な頂を持ち、日差しを受けて深い氷の層を滑らかに光らせている。
その時刻の監視にあたっていたのは、ホノワ村からずっと同行していたサーバルとヴァンだった。見張るだけの仕事には暇を持て余しているようで、山から吹き抜ける冷気を伴った夏風に煽られながら、ヴァンが気だるそうに煙草を吹かしていた。
二人の部隊員は、ユリシスの姿に気付くと敬礼を取った。ユリシスは「こちらの事は気にしないで下さい」と彼らに告げると、東側の方角へラビの視線を促しながら、防壁沿いの塀にある生々しい爪跡を指した。
「氷狼は壁に爪を立て、ここまで登って来ました。今のところは踏み込まれるギリギリのところで食い止められてはいますが、大きな害獣ですから、三頭以上で一気に登って来られたら、数人では立ち打ち出来ないでしょうね」
「確か、一昨日にも出たんだって?」
「情報が早いですね」
そうですよ、とユリシスは、半ば納得のいかない顔で答えた。
その戦闘で怪我を負った男達については、町の病院でまだ治療を受けているのだという。傷口は凍傷になっていたそうだが、大事には至らず、切断といった最悪の事態は避けられたそうだ。