あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

そんな伯母が、男の人を連れてきたのは、私が、まだ小学生の頃だった。


あれは、よく晴れた初夏の日の午後。

久しぶりに伯母が遊びに来る、と聞いて、私は前の日から、母と一緒に伯母を迎える準備をした。

缶詰のフルーツを入れた、かわいいゼリーを作り、一緒に食べようね、と母が嬉しそうに笑ったのに頷いた、幸せな休日の思い出。

母も、久しぶりに伯母と会うのが嬉しいのだろう、と、その時は思っていたけれど、今考えれば、母は伯母から前もって訪問理由を聞いていたのかもしれない。

そして、お昼を過ぎてしばらくした頃。

やって来た伯母はひとりではなく、男の人を連れていた。

ひょろっと背が高くて。

なんだか気の弱そうな、線が細い雰囲気なのに、日に焼けた健康的な肌色の若い男の人。

同じ大人の男の人なのに、中肉中背でちょっとお腹の出てきた父とは全く違って見えて、不思議に思ったのを覚えている。

優しそうな笑顔、穏やかな声。

はじめまして、と腰をかがめたその人が差し出した手を握った時、自分でもびっくりするくらいに胸がドキン、と跳ねた。
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