あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

多分、あれが、私の初恋の始まった日。

そして、初めての失恋が決まった日だった。


もちろん、まだ幼かった私は、すぐにそれが恋だとは思わなかった。

ただ、優しいお兄さんが来て、母とがんばって作ったゼリーを美味しいと褒めてくれて、一緒に遊んで楽しかった。

それだけで終わるはずだった。


夕方になり、2人が帰ってしまったことが悲しくて、暗くなってしまった私に、母は伯母はまた遊びに来る、と言ったけれど。

その時の私がまた会いたいと思ったのは……伯母ではなく、あの人だった。



大好きな伯母。

その伯母が、私達に会わせるために連れてきた男の人。

もう少し大人だったら、すぐにわかったはずのその流れも、まだ子供の私にわかるはずもなく。


その年の秋、近くの公園のイチョウの木が黄色く色づく頃。


今度、結婚式に着ていく服を選びに行こう!

そう母が言い始め、私は思ってもみなかった事実を知ることになった。

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