あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう
伯母は母の姉で、母よりも年上で。
もう、おばさんだ。
それくらいの人は既に結婚しているか、もう結婚しないものだと思っていた。
子供から、お姉ちゃんになり、お姉さんになって何年か経ったら、結婚して、お母さんになって、おばさんになって、おばあちゃんになる……
進化の過程みたいに、子供だった私はそう思い込んでいた。
だから、既に『おばさん』である伯母が結婚する、という状況が理解できず、すこし混乱していたように思う。
「伯母さんが、結婚するの?おばさんなのに?」
変なの、と思ったままを言ったわけではないけれど、母にはその言葉だけで十分だったらしい。
「まあ!この子ったら……」
困ったような顔をした母と違って、父は楽しそうにワハハ、と笑った。
「そうだよなあ」
「もう、お父さん!」