あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

伯母は伯母で、いつもカッコよくて。

母や学校の友達のお母さん達……”普通のおばさん”とは違う存在だと思っていたけれど。

どうやらそれは、間違いだったらしい。


ところで、おばさんの伯母が結婚するということは、相手はどこかのおじさんなんだろうか?

伯母と結婚するのはどんな人なのか……


初めてのことにワクワクしながら、私は布巾を手に戻ってきた母に訊いてみた。

「ねえ、ねえ、伯母さん、誰と結婚するの?」
「この間、一緒にウチに来た人がいたでしょう?あの人よ」

今度こそ、本当に母の言葉の意味がわからなくて、私は首をかしげた。

「あの人って……あの、お兄さん?」

さっきよりも大きな声で笑い出した父に怖い顔をして、母はこぼれたビールを拭きながら、私に言った。

「紗良、そういうこと、誰かの前で絶対言っちゃダメよ」
「そういうことって?」
「姉さんのことをおばさんとか、あの人はお兄さんとか、結婚するのはおかしいとか……そういうこと!」


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