あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

伯母さんが結婚するのがおかしいとは言ってない、と思ったけれど、母がものすごく怖い顔をしていたので、私は大人しく頷いた。

「さっきも言ったでしょう?いくつで結婚するか、そういうのは人によって違うのよ」
「伯母さんは遅くて、あのお兄さんは早いってこと?」
「そういうことだな」
「お父さん!」

今度はぴしゃりと強めに父の肩を叩いて、母が言った。

「雄太さんだって、早いってほどじゃないでしょ。普通よ、普通」
「そうだっけ?ずいぶん若いんじゃなかったか?」
「26歳だって」
「加奈子さんより、ひと回りも若いのか?!」
「ひと回りじゃないわ……13歳よ」
「13……そうすると、彼はまだ、26だろう?加奈子さん、うまいことやったなあ……」
「なによそれ?姉さんが、だましでもしたみたいじゃないの……嫌な言い方」

不機嫌な母の様子に、ようやく気づいた父が慌て始める。

「すまん、その、久しぶりにこういうニュースが聞けて、浮かれていたというか……」


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