あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

「2人とも大人なんですからね、何も問題ないじゃない」
「俺だって、何も問題だなんて思ってないよ!加奈子さんはすごくいい人だし、イイ女だし、俺もすごく嬉し」
「……イイ女?」
「あっ、いや、そうじゃなくて」
「何が、そうじゃない、のよ?」

話題がズレ始めて、父と母は伯母の結婚そっちのけでモメはじめる。

2人のいつものじゃれ合いに巻き込まれると面倒なので、私はそっと立ち上がって、食べ終わった自分の食器をキッチンに持って行った。

その間に話が落ち着いたのか、どうでもいい記憶なので私の頭からすっぽ抜けてるだけなのか……そこらへんは、定かじゃないけれど。

その後で、ソファでテレビを見ていた私の耳に届いた母の言葉は、しっかりと残っている。

「でね、お付き合いも結婚も、彼の方から熱心に申し込んだんですって……そうよ〜……そうそう、本人がそう言ってたんだから!」

< 18 / 72 >

この作品をシェア

pagetop