あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう
それから、しばらく経って。
ずいぶん寒くなってきた冬の始まりの日、あの人と伯母の結婚式が行われた。
私は母が選んだ、少し大人っぽいワンピースを着て、生まれて初めての結婚式に参加する。
その前の年から入院していた祖母を迎えに行くため、父は別行動で、私はいつもよりちょっと身ぎれいな母と、めったに乗らないタクシーに乗った。
結婚式の会場が、どこだったかは覚えていない。
真っ白で広い建物に入ると、2階から弧を描いて伸びる、お城みたいな階段があって、あちこちにたくさんの着飾った人達がいた。
もちろん、全員が私達と同じ結婚式に参加するわけじゃない。
けれど、今日の良き日に集まった、という点では、全員が同じ状況だったんだろう。
どの顔も、笑顔で楽しそうに見えた。
嬉しげなおしゃべりの中を歩き、私と母が案内されたのは、新婦の控室。
小さくノックした母の声に、どうぞ、と伯母の声が応えて、開かれたドアの向こうにいたのは……いつもとは別人の伯母だった。