あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

「きれい!」

はしゃいだ声をあげて中に入った母の後ろに続くと、伯母は初めて見る、はにかんだ笑みを浮かべて、こちらを見た。

「……そう?おかしくない?」
「全然!すっごくきれいよ、姉さん!」

母の言う通り、どこかのお姫様みたいな白いドレスを着た伯母は、見たこともないぐらいにキレイだった。

「本当にキレイよ……ね、紗良」

涙ぐみながら振り返った母に言われて、遅ればせながら、私も力いっぱい頷く。

「この年でウエディングドレスなんて、と思ったけど、まあそれなりに形になるものなのね……プロって、すごいわ」
「そんなこと言わないで、本当によく似合ってるんだから……」
「ふふ、でもね、私くらいになると若い子と違って、勧められるのは、あなたが着たみたいな真っ白のドレスじゃないの」
「え?白いじゃない」
「それが、違うの。これはちょっとクリーム色で、黄みがかってるのよ」
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