あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

「……そうかな」

ちょっと恥ずかしそうに言って、伯母はいつもより華やかなネイルの指先で、耳たぶを飾っている豪華なイヤリングに触れた。

「私、ちょっと、緊張しているのかもしれないわ……」
「……みんな、そうなるものよ」
「ドレスの裾を踏んだりして、転んだらどうしよう……」
「……姉さんは私と違って、ヒールの靴を履きなれているから大丈夫よ」

母と伯母は、2人だけにしかわからない話をして、くすくすと顔を見合わせて笑い合う。

こんな時の母は、いつもよりずっと若く、かわいく見えて……

私は、そんな2人の姿を見るのが好きだった。

「……おめでとう、姉さん」
「……ありがとう、美也子」
「幸せになってね」
「……うん」

涙を浮かべた伯母が微笑みを浮かべたまま、こっちを見る。

いつもと違う、その笑顔にドキドキしながら、私もあふれる嬉しさに、自然と笑顔になっていた。

「おめでとう!」

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