あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう


この感情が、何なのか。

どうしてこんなにも涙が出るのか。

この時の私には、よくわからなかったけど。


1年ほどが経ったある日の放課後、その疑問はあっさりと解決されてしまった。


あの時は多分、みんなで集まって、少女マンガか何かを見ていたんだと思う。

どんな内容だったか、よくは覚えていないけれど、キスシーンを見ていたんだ。

それで、その主人公と男の子がキスしてるのを見て、適役の女の子が怒りの表情を浮かべる……そんな感じの。

「この子、ヤバいよね」
「わざわざ見に来るとか、ストーカーでしょ」
「この2人の邪魔しないで欲しい~」

そんな風にキャッキャする友達の中で、私は1人、サーっと自分の体温が下がっていくのを感じていた。

シチュエーションはちょっと違うけれど。


この適役の女の子は、私だ……


私はそう、はっきりと感じたから。


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