あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

それで、あの人が癒されるとは思っていなかった……と思う。


でも、その悲しみをちょっとでも分け合えたら……そう思った。



固まったままの、その顔を、背中を、少しでも和らげてあげたい。

父と私が、母とそうしたように、少しでも慰めてあげたい。



同じ悲しみを抱えた者として。

そして、できるのならば…………

あの人の、特別な存在として。




簡単に言ってしまえば。


これは……チャンスだと。

私はそう、思ったんだと思う。


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