あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう
「紗良ちゃん……」
ため息交じりの声が私を呼んで、雄太さんは手にしていた小玉スイカを置き、お腹に巻きつけられた私の腕にそっと手を添えた。
「おじさんをからかっちゃいけないよ…………なんて言うのは……ズルいのかな」
「……ズルいです」
「……君の勘違いだよ、って言うのも……無し?」
「無し、です」
「そうかぁ……」
「ごまかすのも、かわすのも、ダメです」
「……まいったな、もう思いつかない」
苦笑する感じで言って、雄太さんはやんわりと私の手首を掴んだ。
意外と引き締まったお腹から離される手を見ながら、私は泣きたい気持ちで雄太さんから体を離す。
「……ごめんなさい……困らせて」
ありったけの勇気をこめた手を引っ込めた私の声は、みっともなく震えていた。