あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう
その姿を意識させるように、頭をそらすようにして顔をあげる。
「…………よく見て、確かめて……」
私の顔に伯母の面影を見たのか、雄太さんが驚きに目を見開く。
こんな風に、誰かに迫ったことなんてない。
誰かの代わりでもいいなんて、思ったこともなかったけれど。
今、雄太さんが、受け入れてくれるなら。
……それでもいい。
伯母さんを、忘れなくてもいいから。
「好きなの……」
決死の思いが伝わったのか、頭に置かれていた雄太さんの手が乱暴なくらいの勢いで肩を掴んだ。
「……私、雄太さんが好き」
痛いくらいの力に、少しの怯えを感じながら。
つぶやくように訴えると、雄太さんはぐっと私を強く抱き寄せた。
見上げた目と目が合って、頬に添えられた指先が滑り、大きな手のひらで頬を包まれる。
あれから10年……
待ち望んだ瞬間に、私はそっと目を閉じた。