あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう
誰にも知られないように、ひっそりと涙を流した日々のことを思い出されて……ズキン、と、胸が痛んだ。
もうずっとずっと……この先もずっと?
あんな風に声を殺して泣いて、何もなかったようなフリをするの?
そう思ったら、堪えきれなくなった涙が、目尻から顎まで、つうっと滑り落ちた。
泣くつもりなんてなかったのに。
湧き出る涙を牽制するように、ぐい、と手の甲で強めに冷たい雫を拭うと、私はクリアになった視界を流れる景色がいつもと違うことに気づいた。
アイツから逃げるため、手近なところに止まっていた電車に乗ったので、いつもの路線ではない電車に乗ってしまったらしい。
次の駅名を告げるアナウンスが流れて、私は思わず小さな声を漏らしていた。
「やっぱり……」