あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう
「…………違う……違うんだ」
言い聞かせるような声は、切なさを帯びて悲しく響く。
顔を上げると、私を見つめる雄太さんの目が細められて。
「………………ごめんね、紗良ちゃん」
後頭部を押さえていた雄太さんの手が、さっきとは違う優しさで私の髪を撫でた。
言われた言葉の意味よりも、抱きしめる腕の感触が、雄太さんの気持ちを如実に表している。
体温を分け合うこの状況でも、雄太さんは、優しい。
まるで小さな子供をあやすように、その目にも、腕にも、指先でさえ……優しさしかない。
どんな言葉よりも、それが、雄太さんの気持ちをはっきり伝えてきて……
何も言えない私を見下ろし、雄太さんは泣きそうに顔を歪め、言った。
「君は……加奈子とは、違う」