あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

そう言いたかったけど。


いきなり抱きついたり、告白したりしたのは私だし。

きっと、雄太さんはそんなこと思いもしなかっただろうから。


ちょっと不服だけど、私は黙ってスイカを食べることにする。

スプーンの先で種をよけ、不満をぶつけるように勢いよくシャクッと赤い果肉をすくって口に運ぶと、さっぱりしたジュースが口の中にあふれた。

やっぱり、夏はスイカだ。

もうちょっと冷えてれば最高だったけど、これはこれで甘さが強く感じられて美味しいかもしれない。


丹念に味わっていると、目の前で小さく笑う気配がした。

「……なに?」
「いや……確かに、紗良ちゃんは加奈子さんと似てるなあと思って」


さっきは加奈子って言ってたのに、今度は、さん、付け。

もしかして、加奈子って呼ぶのは2人っきりの時だけだったのかな……?


そう思ったら、やっぱりまだ胸の中がモヤッとした。
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