そして僕はまた、君に出会える時を待つ
「そういえば、名前も訊いてなかったね」
「あ、鈴木です。鈴木雄太」
「早川加奈子です」
自己紹介をし合って、ぺこりと小さく頭を下げた。
今更だな、と思いながら、そろりと加奈子さんのうかがうと。
同じように中途半端な態勢で、上目遣いでこちらをうかがっていた加奈子さんと目が合った。
示し合わせたような動きに揃って吹き出すと、一緒に笑いだしてしまった僕と加奈子さん。
ひとしきり笑った後で、加奈子さんが左腕を上げ、手首に付けた華奢な腕時計を見た。
「……とりあえず、飲みにでも行かない?」
傾き始めた太陽の光に、まぶしそうに目を細めながら、加奈子さんは少し照れたような笑みを浮かべた。
「もちろん、良かったら……だけど」
一度だけ、瞬きをした後の僕が、なんと返したかはもちろん決まっている。
なにせ、このチャンスを掴むために、毎日ここに通っていたのだから。