そして僕はまた、君に出会える時を待つ
行為だけを考えれば、僕も……多分、彼女も……初めていうわけではないけれど。
終わった後に、こんなにも満たされた余韻を感じるのは、本当に、生まれて初めてで。
僕は、世界中の幸せを独り占めにしたような多幸感を感じていた。
「加奈子さん……」
その気持ちのままにその背中を抱きこみ、細い体を引き寄せると、少しかすれた声で、彼女は穏やかじゃない言葉を発した。
「…………だまされた……」
深く大きなため息と共に吐き出された言葉に、僕は驚いて、動きを止める。
「え?」
ホテルに行こう、という提案は彼女からのものだったし、大事なポイントごとの同意は取ったつもりだったんだけど……
「……僕また何かやらかしました?」
「やらかしたっていうか……」
口ごもる彼女の耳元が、みるみるうちに朱に染まっていく。
無理強いしたつもりはなかったけれど、僕は何か重大な見落としをしていたのかもしれない。