そして僕はまた、君に出会える時を待つ

返事を待っていると、加奈子さんはぷいと怒ったように瞳をそらす。

「……その………………よすぎたから」

恥じらいのたっぷりこもった小さなつぶやきに、愛しさと幸せが爆発する。

「あははっ」
「……笑いごとじゃないのよ!」
「だって……」
「さっきから全然、体に力が入らないんだから」

腹の奥からこみ上げる嬉しい笑いをおさめてみれば、確かに、腕の中の体は生まれたばかりの小鹿のように小刻みに震えていた。

「もう本当にこれ、どうしたら……」
「加奈子さん、かわいすぎる」
「もう!だから、そういうの……ズルい」
「良かった」
「……良くない」
「え?でもさっき、よかったって言いましたよ?」
「そ、それは……」

真っ赤になる加奈子さんの顔を上から覗き込んで、顎を指先で軽く固定する。

見つめ合う目の中に、拒否の色がないことをしっかり確認して。

僕は、枕の上に投げ出されていた彼女の手をとった。
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