そして僕はまた、君に出会える時を待つ
「……そうですね」
来月の、加奈子さんの誕生日。
まだ彼女には言ってないけれど、候補の場所選定に入っていた僕はすぐに頷いた。
「だからね、私は……あなたとは、時間の流れが違うのよ」
「時間は、平等なものだと思いますけど……」
思わず理詰めで話し始めそうになり、おっと、とブレーキをかける。
加奈子さんが言いたいのは、多分、感覚的な時間の流れのことだ。
「人生のステージとでも言えばいいのかな。私はもう……ただ、楽しいだけの恋をしている年齢ではないのよ」
「それは……」
楽しいだけの恋……
そう言われて、僕は返す言葉を失った。
加奈子さんと過ごした時間は全て、僕にとっては楽しくて……楽しいことばかりの思い出だったから。くて……楽しいことばかりの思い出だったから。
「あの日……」
さっきまでの勢いが僕から失われていくのを感じたのか、加奈子さんは慈愛さえ感じられるような優しい笑みを浮かべて話し始めた。