そして僕はまた、君に出会える時を待つ
「ケイさんの店で、コーヒーを飲んだ日のことを覚えてる?」
「……もちろん」
僕らが、付き合い始めた日だ。
忘れるはずがない。
「確か私、男の人と会った話をしていたでしょ?」
「はい、失礼な男と会った話をしてましたね」
「……あれは、婚活会社から紹介された人なの」
加奈子さんの年齢を考えれば、結婚を考えていたっておかしくはないけれど。
いかにもキャリアウーマンといった雰囲気の彼女から、そんな単語が発せられたのは少し意外だった。
「……そうだったんですか」
彼女の行動については何も思わないが、あの日の相手の男に腹が立った。
まずデータを確認しているだろうに、会ってから、年齢がどうこう言うなんて、おかしいだろ。
「つまり、加奈子さんは結婚を考えているってことなんですね?」
「…………そう」
「そうですか……」
僕の相槌に、話は終わった、とばかりに、バッグからハンカチを取り出す彼女。