そして僕はまた、君に出会える時を待つ
ぽかんと開いた口が塞がらなくなった加奈子さんが反論する前に、僕はたたみかけるように続ける。
「確かに、僕はまだ若くて、未熟で、誰かを養えるほどの収入もないし……あなたから見れば、頼りないことだらけの男かもしれません」
何かを言いかける彼女を目で制して、気になっているらしいことにも、触れておく。
「あなたは大人の女性で……とてもステキな人だ。僕と違って、相手はいくらでも見つかるでしょう」
違う、という風に、唇を噛んで頭を横に振る彼女に手を伸ばして。
そっと手のひら乗せられた彼女の指先を握り、僕は何度も伝えて来た言葉を、もう一度、繰り返した。
「でも……あなたが好きだ」
加奈子さんの目から、ぽろぽろと涙をこぼれるのを見ながら、抱きしめる代わりに、指先を包み込んで。
「僕は、あなたじゃなきゃダメなんです」
こんな流れで言うことじゃないと思うけど、次の機会がないのなら、言うべき時は今しかない。