そして僕はまた、君に出会える時を待つ
キュッと一瞬その唇を噛みしめて、加奈子さんはこれまで語ったことのなかった家族の話を僕にしてくれた。
ずいぶん前に亡くなった、お父さんのこと。
早くに結婚した妹と、その家族。
かわいい姪っ子がいること。
実家に1人暮らしの、母親。
その母親が、去年の春に入院したこと。
ガンだと、宣告されたこと。
「手術もしたし、夏には退院して普通に生活してたの。でも、今年の初めに、また別の場所で見つかって……」
「……再発したってことですか?」
「うん……手術して、今は落ち着いているんだけど」
「そう……良かった」
握った彼女の手の甲を親指で撫でれば、彼女はそれを見下ろしながら、口元だけで笑った。