そして僕はまた、君に出会える時を待つ
あまり考えたことがなかったけれど、この国の性別による差別的な考えは、今でも根深く残っているらしい。
「結婚したから、とか、妻だから、とか。そういう役割分担は、今の世の中にも僕らにも、合わないんじゃないですかね」
外見も中身も、生きて来た環境さえ違うのだから、みんな一緒くたにするのはおかしなことなのに。
世間はなぜ自分の“当たり前”の形を、他人に押しつけようとするんだろう?
同じ森で育った虫でさえ、違う習性で違う生を生きる。
それより複雑な造りの人間が、全く同じように生きられるはずがないんだ。
「そもそも僕も、昨日まで結婚なんてする気はなかったですし」
「うん……まだ若いしね……」
「あ、いや、そうじゃなくて」
落ちた声のトーンに、僕の方こそ、彼女に何も話していなかったことに気づいた。
「僕、親と暮らした記憶が全くないので。結婚とか、家庭ってものにあまり馴染みがなくて…したいとも思わなかったんですよね」