そして僕はまた、君に出会える時を待つ
・大人のいろいろ
君と出会ってから、3週間と1日が経った日。
仕事終わりの夕食を、あのカフェバーで摂ろうと、僕はもうほとんど覚えてしまったメニューを思い出しながら、洒落たドアを開けた。
「あ、いらっしゃい」
毎日のように通っている僕の顔を見て意味ありげに微笑むと、マスターは訳知り顔でカウンターに視線を移した。
「ケイさん、おかわり~」
後ろ姿ではわからなかったけれど、この3週間、思い描いていた人の声はすぐにわかった。
女性にしては少しだけ低めの、やわらかな声。
待ちに待った人との、再会の瞬間。
緊張で、ドアの前で硬直してしまった僕を見て、マスターは包容力の塊のような微笑みを向けると、彼女がいるカウンターを示した。
「こっち、どうぞ」
3つあるテーブル席の1つにはカップルがいたけれど、早い時間のせいか、他の客はいなかった。
けれど、ひとりの客をカウンターに案内するのは、おかしなことじゃない。