そして僕はまた、君に出会える時を待つ
そう自分に言い聞かせて、僕はぎくしゃくと彼女の座る席から1つ離れた高い椅子に尻を下ろした。
「何にします?」
メニューを見始めて、わりとすぐに声をかけられたのは、きっと毎日通っていたせいだろう。
何度か同じものを頼んだから、今日もそうだろうと予想されているのかもしれない。
そう思うと気恥ずかしかったが、迷うそぶりをするような演技力もないので、僕はすぐに目当ての品名を伝える。
「キーマカレーと、本日のコーヒーで」
言った瞬間に、ぐりん、と音がするほどの勢いで、彼女がこちらに顔を向けた。
「こんな時間に、コーヒー?」
そう言う彼女の手には、濃い赤紫の液体の入ったワイングラスが揺れている。
「お酒じゃないの?バーよ、ここぉ~」
この間とは違う、崩れた雰囲気の彼女。
赤い顔。
とろんとした目。
完全に酔っている。
「こらこら」