そして僕はまた、君に出会える時を待つ

そう自分に言い聞かせて、僕はぎくしゃくと彼女の座る席から1つ離れた高い椅子に尻を下ろした。

「何にします?」

メニューを見始めて、わりとすぐに声をかけられたのは、きっと毎日通っていたせいだろう。

何度か同じものを頼んだから、今日もそうだろうと予想されているのかもしれない。

そう思うと気恥ずかしかったが、迷うそぶりをするような演技力もないので、僕はすぐに目当ての品名を伝える。

「キーマカレーと、本日のコーヒーで」

言った瞬間に、ぐりん、と音がするほどの勢いで、彼女がこちらに顔を向けた。

「こんな時間に、コーヒー?」

そう言う彼女の手には、濃い赤紫の液体の入ったワイングラスが揺れている。

「お酒じゃないの?バーよ、ここぉ~」

この間とは違う、崩れた雰囲気の彼女。

赤い顔。

とろんとした目。


完全に酔っている。


「こらこら」
< 7 / 83 >

この作品をシェア

pagetop