そして僕はまた、君に出会える時を待つ
「雄太くん。座って?」
「え?あ、はい」
「あのさ……レモンより先に、言うことはないのかな?」
「……え?」
少しすねたような顔の加奈子さんと見つめ合って、あ、と気づく。
「……ありがとう」
「ありがとう?」
おかしそうに笑う加奈子さんをそっと抱きしめて、もう一度。
「うん。ありがとう、です」
子供はいてもいなくてもいいと思っていたけれど、彼女の中に宿ったという命のことを思うと、その言葉しか思いつかなかった。
「ありがとう。加奈子さん」
そして、僕は初めて加奈子さんが1年ほど前から通っていたというクリニックについていき、画面越しに、生まれて初めて我が子の姿を目にすることができた。
白いリングに包まれたその子は、まだ完全な人の形にはなってはいなかったけれど。
ピクピク動く小さな心臓の動きで、確かに、その命の存在を確認できた。
「早川さん、やったね!おめでとう!」