そして僕はまた、君に出会える時を待つ
カーテンの向こうで医師がそう言い、加奈子さんは目頭を押さえる。
幸せな、涙の瞬間だった。
その夜、僕らはノンカフェインのお茶で祝杯を挙げ、これからの生活と新しい家族の誕生に思いを馳せた。
加奈子さんの体調は更に悪くなり、仕事を休むこともあったので、僕は積極的に家事をして、できるだけ彼女を休ませるように心がけた。
しかし、そこから3週間後。
クリニックで告げられたのは、束の間の浮かれ気分を根こそぎ破壊する悲しい宣告。
「心臓の動きが……見えませんね……」
聞こえた言葉の意味がすぐには理解できず、声も出なかった。
「残念ですが……」
流産。
その言葉自体は、知っていたけれど。
まるで、ドラマの1シーン。
フィクションの道具か何かのようにしか思っていなかったものを突きつけられ、僕の頭は真っ白になった。
「…………そうですか……」
低くつぶやかれた声にハッと見下ろすと、診察台が動き出して、加奈子さんの顔は見えなくなった。