そして僕はまた、君に出会える時を待つ
小さな子供に言うように言って、マスターは水の入ったグラスを彼女の前に置いた。
「他のお客さんにからまないの」
「……は~い」
一瞬、ぼんやりとした目で僕を見つめた後で、彼女は少し間延びした返事を返して、水のグラスに口をつけた。
「すみません」
僕の前にも同じ水のグラスを置きながら、苦笑する感じに眉を下げたマスターが言う。
「ちょっと目を離した隙に、飲みすぎちゃったみたいで」
何と言っていいかわからず、ああ、と声を漏らすと、マスターはまた彼女の前に戻って声をかける。
「大丈夫?」
「ケイさん、おかわり~」
「今日はもう、やめといた方がいいって」
彼女は、いわゆる常連というやつなんだろうか。
普通の客と、店のスタッフという関係より親しい雰囲気に、なんだか胸がざわざわした。
「タクシー、呼ぼうか?」
「……うん」
彼女のグラスを手にしたマスターが、厨房であろう奥の方に入っていく。