きみに ひとめぼれなおし
由美の言う通り、勝見君はイケメンではないけど、ものすごく頭がいい。
そしてものすごく運動神経がいい。
テストが終わるたびに掲示される成績上位者にはいつも勝見君の名前があるし、体力テストの結果で選出される体育祭の対抗リレーの選手にも、毎年選ばれている。
サッカーだって本当にうまい。
勝見君はサッカーが好きだし、時々遅刻はしても、部活には毎日まじめに行っている。
顔よし、サービス精神旺盛、目立ちたがり屋の広瀬君に比べたら、確かにその存在は霞んで見える。
だけど試合を支えてその得点につなげているのはいつも勝見君だ。
勝見君をちゃんと見てればわかる。

だけど勝見君は見た目にも無気力で、体も細くてひょろりとしているから、部活に毎日まじめに行っていることはおろか、運動部とも思われていない。
それどころか帰宅部とさえ思われている。

こんなにすごい勝見君だけど、学校で目立つことも話題にされることもなければ、女子にモテてこなかったのは、ただ単に、目立つことが嫌いだからだ。
人前に出て仕切ったり、みんなと派手に何かをすることを、自主的に、極力避けているからだ。
目立ちたくないゆえに、自ら気配を消すのが得意らしい。
まるで、空気のような人。
いるのに、いないふり。
時々、いなかったのに、いたふり。
それが、勝見君。
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