きみに ひとめぼれなおし
だけど由美の言う通り、時間はあっという間に過ぎていった。
ゴールデンウィークが過ぎ、梅雨に入り、長い梅雨が終わるころには夏休み直前だった。
その間にも「試験」と名の付くテストはたくさんあった。
この世の中にこんなにたくさんの試験があるなんて、受験生にならなければきっと気づかないだろう。
そうでなくても、毎日何かしらの授業で小テストが行われる。
解答と採点の繰り返しと、その結果にうんざりする日々を送っていた。
ゴールデンウィークもまともに休んでいない。
まあ、受験生だから仕方がない。

梅雨の時期は毎日雨が降っていること以外何もなかった。
「今日も雨か」、そんなことしか思わなかった。
去年は由美の機嫌が悪く、口数も少なくて、常にどんよりした空気を隣で感じていたけど、今年はそれも気にならなかった。
どれも同じ一日に感じた。
ただただ繰り返されるテストと、その結果と評価に、打ちのめされる日々。

「今日も暑かったね」

毎日一緒にいるはずなのに、由美の声を久しぶりに聞いたような気がした。
その声でようやく、いつの間にか梅雨が明けて、まるで身を隠すようにひっそりと夏がやってきていたことに気づいた。

「模試の結果どうだった?」

最近定位置となった職員室前の机で勉強に取り掛かろうとしたとき、由美が私に尋ねた。

「うーん、いまいち」

私の返事に、「私もー」と由美は軽い調子で返してくる。
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