きみに ひとめぼれなおし
勝負の夏休み。
一向に上がらない成績を何とかするために、三年生になってから通い始めた塾の自習室にこもりっきりで勉強をした。
そうでもしないと、勝見君と同じ志望校どころか、第二志望以降だって危うかった。
毎日こうして由美と塾の扉をくぐり、教室でも自習室でも隣に由美を感じながら、数時間後に再び塾の扉を開けて帰宅する。
朝から夜まで、勉強漬け。
今さらだけど、受験生って大変だ。
なんて話を、毎日由美と飽きることなく繰り返す。
最初に飽きたのは、由美だった。
「最近どう?」
「どうって、見ての通りだけど。毎日一緒にいるからわかるでしょ?」
「あかりじゃなくて、勝見君」
「勝見君が、何」
その名前を聞いて、答える声に思わず苛立ちが混ざった。
「勝見君とは最近どうなのって聞いてるの」
「どうって……」
「最近あかりから勝見君との話聞いてないし、受験の話ばっかだし。もっと女子トークしようよう」
クーラーの効いたカフェでクリームソーダをかき混ぜながら、不服そうな上目遣いで由美が私を見る。
唇をつきだしてせがむような表情にどきりとする。